「人工中耳」って知ってるでしょうか?
「人工内耳」ではないですよ。
今日本で認可されている「人工中耳」は
メドエルジャパン株式会社のVIBRANT SOUNDBRIDGE(以下、VSB)です。
日本耳鼻科学会が示した人工中耳(VSB)の適用基準に
「両耳が難聴であること」は特に言及されていません。
つまり、片耳難聴の方も保険が適用されるかもしれません。(もちろん断定はできませんが)
YUKI自身は人工中耳ユーザーではありません。
しかし、医療関係者やメーカー、また人工中耳ユーザーの友人から色々お話を聞くことができました。
それらをもとに、「人工中耳とはなにか?」を述べていきたいと思います。
人工中耳ってなに?
人工中耳とは
耳小骨などの中耳を直接震わせて音を伝える
という何とも大胆で斬新な埋め込み型補聴器の1つです。
人工中耳は、体外機器と体内機器の2つの部分から成り立ちます。
体外機器:音を拾うためのオーディオプロセッサの部分
体内機器:拾った音を直接中耳を震わせて伝えるマグネットや導線、振動子の部分(総じてインプラントとも呼ばれています)
人工中耳の仕組み
- オーディオプロセッサが音を拾います。オーディオプロセッサは手術で埋め込まれた体内機器の上に、磁石のように取り付けられます。
- オーディオプロセッサが音を電気信号に変換します。
- これらの電気信号が皮膚を介して、体内機器であるインプラントのマグネットの部分に送られます。
- さらに、これらの電気信号は導線を通って、振動子に送られます。
- この振動子が、電気信号を機械的な振動に変換し、中耳(耳小骨など)を直接震わせます。
- これらの振動によって、音が内耳や脳まで伝わって音として認識されます。
参考|メドエルジャパン株式会社 Webサイト
人工中耳の対象となり得る難聴の種類
人工中耳はBahaシステムと同じく
「伝音性難聴」や「混合性難聴」の方に適していると言われています。
具体的な人工中耳が対象となり得る疾患名は以下の通りです。
- 外耳道閉鎖症
- 小耳症
- 無耳症
- 外耳道狭窄
- 真珠腫
- 中耳炎奇形 等
小耳症は伝音性難聴なので、人工中耳は適しています。
しかし、人工中耳の対象となる疾患は、中耳炎の方がほとんどだそうです。
(その理由は後述いたします。)
人工中耳の保険の対象について
メドエルジャパンが販売している人工中耳(VSB)は以下の条件を満たす場合に保険が適用されます。
- 人工中耳を埋め込む耳が伝音性難聴または混合性難聴であること
- 人工中耳を埋め込む耳の骨伝導の聴力が定められたレベルに達していること
(※つまり、骨を通して音が聞こえる状態であるということ) - 既存の治療を行っても改善が困難である難聴があり、気導補聴器および骨伝導補聴器が装用できない明らかな理由があること。
もしくは、最善の気導補聴器または骨伝導補聴器を選択・調整するも適合不十分と判断できること。
お気づきでしょうか?
Bahaシステムの適用条件と異なり
「両耳が難聴であること」という言及が一切ありません。
つまり
片耳難聴の方も伝音性難聴または混合性難聴であれば、保険の対象となるかもしれません。
もちろん断定はできませんが、自分で判断せず、まずは医療機関にご相談ください。
人工中耳のメリット
人工中耳のメリットは
普通の人が聞くのと同じ、より自然な音に近い音を聞くことができる
それは、人工中耳の聞こえの仕組みが通常の聞こえに限りなく近いからです。
- 通常の聞こえ方
鼓膜から伝わった音の振動を、耳小骨(中耳)で増幅させ、蝸牛(内耳)に伝えます。 - Bahaシステムの聞こえ方
骨を通じて、音の振動を蝸牛(内耳)に伝えます。 - 人工中耳の聞こえ方
直接耳小骨(中耳)を振動させて、音の振動を蝸牛(内耳)に伝えます。
耳小骨から蝸牛に音を伝えるという点で通常の音の聞き方と同じです。
機械でありながらも、より自然に近い音を獲得することができると期待されています。
YUKI自身は生まれてからずっと、骨伝導の音しか知りません。
通常の聞こえとどう違うのか、大変興味深いところです。
人工中耳のリスク
人工中耳は身体に埋め込む医療機器なので、様々なリスクが生じます。
考えられるリスクですが、自分なりに整理してみました。
あくまで、YUKI個人の考える意見として参考にしてください。
- 小耳症や外耳道閉鎖症を伴う疾患の場合、手術が技術的に困難な場合がある
- MRIの使用が禁忌になる
前述のとおり、人工中耳の対象となる疾患は中耳炎が多いと言われているのはそのためです。
小耳症や外耳道閉鎖症を伴う場合、
顔面神経が通常の人よりも複雑に走行している
ことが多いそうです。
振動子を設置するために中耳までアプローチするけれど・・・
顔面神経が邪魔して振動子を設置することができなかった
っというケースが稀にあります。
そうならないために、事前にCTスキャンやMRIでしっかりとチェックします。
本当に人それぞれ症状は異なるので、まずは医療機関に相談することが一番だと思います。
身体に磁石を埋め込むということは、様々な制約がうまれます。
その代表的な1つが、
MRIが受けられなくなる
ということです。
これは、人工内耳やペースメーカーなど他の磁力を伴う医療機器と同じですね。
頭部のMRIが禁忌になるのではなく、MRI室に入ること自体が禁忌になります。
撮影していない時でも、MRI室内では磁力がいつも発生しているからです。
代わりに、CTスキャンで代用することになります。
ある病院の話ですが
例えば人工内耳の場合、MRIを撮れなくてもCTでガンや心臓の治療ができています。
MRIが撮れなかったという理由で、治療の機会を逸したという報告はありません。
「万が一緊急の事態になったときは、命を優先にして人工中耳をはずしてMRIを受ければ良い」
と話していた人工中耳ユーザーの友人もいます。
まさにその通りだと思います。
とはいえ、体内に磁石が入るというのは結構大変です。
Bahaシステムとは比べものにならないくらいの制約があると思っていいかもしれません。
後悔のない決断をするためには、できる限り情報を集め、メリット・デメリットを冷静に整理し、自分自身で考えて決めることが大切ですね。
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